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少子化対策の一環として、N分N乗方式による子育て支援税制が検討されています。全国女性税理士連盟は、N分N乗方式の導入について次のとおり意見を表明します。
子育て支援策としての効果は期待できない
安心して生み、育てられる社会環境の整備こそ重要
1 低所得者層には減税効果及ばず、高所得者層に大幅減税
現行方式と、N分N乗方式による税額を比較した場合(別表参照)、一般的に、低所得者層において減税効果はなく(むしろ増税)、高所得者層において大幅な減税となる傾向が見られます。
わが国所得階層の大半は中堅所得者層以下であり、これらの所得者層にとっては減税効果が少なく、また低所得者層にとっては、もともと所得税が生じていないため、減税の効果は及びません。
子育て面で経済的支援を必要とする所得階層に減税の効果が及ばないN分N乗方式の導入は、出産へのインセンティヴとはならないと考えられます。また、高所得者層においても減税が出産意欲向上につながるかどうか極めて不透明です。
N分N乗方式を導入しているフランスで出生率の向上が見られることについては、そもそも税率構造をはじめとして税制が異なること、その他各種の法制度、政策、家族の態様、文化等、多方面でわが国と国情の違いがあることを考慮する必要があると思われます。
2 税制の中立性・公平性を損なう
N分N乗方式は、家族数が多いほど有利になることから、既婚者に有利に働き、その効果は高所得者層ほど大きくなります。このことは担税力からみた公平性の観点や婚姻における税制の中立性の観点から問題があります。
家族数の多寡による担税力への配慮については、現行税制においても各種人的控除により税負担を調整する措置が講じられており、あえてN分N乗方式を導入する必要性はないと考えます。
3 現行法制度、理念との整合性を欠く
現行所得税法は、個人が稼得した所得に担税力を見出して課税するという所得税本来の原則、及び戦後の家族制度の改正を背景に家族単位主義から個人単位主義へという歴史的変遷を踏まえ、現在は、個人単位課税を原則としています。世帯を単位として課税するN分N乗方式の導入は、この原則を根本から覆すものであり、理念の不統一による制度のゆがみをもたらす可能性があります。
また、夫婦別産制を採用する民法とも整合性を欠くことになります。
4 制度の複雑化により事務負担が増大
N分N乗方式は、一定の家族の収入を合算し、その合計額を所定の家族単位数で除して税額を算出し、それに家族単位数を乗じて年税額を計算するものです。この方式を導入すれば、対象家族全員の収入金額を把握して年税額を確定する必要があり、プライバシーの問題とも絡んで、源泉徴収、年末調整、確定申告等の納税事務において大幅な負担増が懸念されます。また、制度の複雑化による周知・徹底やその運用にも多大な行政コストが必要となることが予想され、費用対効果の点からも、制度導入に疑問があります。
5 安心して生み育てられる社会環境の整備こそ重要
少子化対策の一つとして税制が検討される余地のあることは否定できませんが、N分N乗方式については、効果的な政策であるとはいえず、かえってその弊害が懸念されます。
今、早急に求められるべきは、税制の安易な手直しではなく、幅広い視点から、安心して子供を生み育てることのできる社会環境を整備していくことであると考えます。
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